チーム作りの教科書
『THE TEAM 5つの法則』 / 麻野耕司
良いチームとは何か?
良いチームを作るにはどうすればよいのか?
この問いに対して5つの視点から理論的に答えてくれるのが『THE TEAM』。
良いチームと悪いチームは確実に存在している。
しかしその二つの違いであったり、良いチームを作るための具体的な方法は広く知られていない。
この本ではそれをきちんと学術的背景に基づいて、
①A - Aim 「目標設定」
②B - Boading 「人員選定」
③C - Communication 「意思疎通」
④D - Decision 「意思決定」
⑤E - Engagement 「共感創造」
の5つの視点から読み解かれている。
それぞれについて詳しくはまた別でまとめるとして、ここではどの章でも共通して言われている事、良いチーム作りをしていく上で留めておいたほうが良いと思ったことを3つ挙げていこうと思う。
チーム作りには絶対解はなく、最適解がある
「これさえやればいいチームが作れる!」
そんな謳い文句の本やサイトには気をつけたほうがいいと思った。
それはチーム作りには絶対解など存在しないからだ。
その理由としては単純で、チームとは一口に言っても様々な特徴のチームがあるからだ。
会社で考えてみると、
・業務内容に日々変化がある or 無い
・それぞれの人材どうしの関わりが大きい or 小さい
など、大きく違いがある。
この本ではそれを4つのタイプに分類して紹介し、それぞれに合ったチーム作りを提唱している。
確実に成功するといわれている方法をただ取り入れるのではなく、まずは自分達のチームがどんな特徴のチームでどんな目標を達成したいのかを分析する。そして、そのチームにとっての最適解を見つけ実行していくことこそが一番の近道であるということだ。
チームとはメンバー全員で作り上げていくものである
意思決定の章でこんな事が書かれている
チームとして意思決定を迫られるのはメリットが51%あり、デメリットが49%あるようなことに対してだけだ。それを意思決定者だけでなくチームメンバーが理解し、意思決定者の決断を自分たちの手で正解にする気概が重要だ。
このことからも言えるように、チーム作りというのはリーダーのみが考え、実行していくものではないのだ。メンバー全員がチームの一員であるだけでなく、理想のチームを作り上げているという自覚と行動がなくては良いチームというのは作れないということだ。
他の章でもすべて同じことが言える。どれだけリーダーが目標を立てても、人員選定を行っても、そのチームの大半を占めるメンバーがそれを理解して、”自分ごと”として動かなければチームは良い方には動かない。
そういう意味ではこの本はすべての人が読む価値があり、この本を読んでチームをよくしようと意気込んでいる上司やリーダーはチームのメンバーに本を渡すなり、内容を共有するなりすることが必要不可欠になってくるだろう。
チーム作りは理論である
この本の魅力のひとつとして、すべて学術的背景をもとに書かれているところを感じた。有名大学や教授の実験や提唱する理論に基づき5つの法則だ展開されている。さらには巻末にはその内容をすべて付録として載せてある。
「ある会社の成功したチームを作った人の体験談を載せたから真似するといいよ!」
ではなく、学術的背景をもとにして考えられたチームに対する考え方を共有してくれているのだ。
やはり説得力があるし、理に適っている。
「気合が必要だ!」
「みんなで一丸となって頑張ろう!」
なんてことだけでいいチームを作れることは奇跡でしか起きない。
そんな奇跡に期待するより、きちんとチームについて学び、メンバー全体で考えることで良いチームというのは確実に作り上げていくことができるのだ。
勉強になる本だったし、実際の活動に直接取り入れやすいものだった。
チーム作りの教科書といってもいいと思う。内容も一項目ごとに見やすいし、すらすら読める作りになっているところも魅力的だ。
チームというのはごまんとある。その中で自分たちのチームを”良いチーム”にするには、いかにチームに対して真剣に考え、行動できるかにかかってきている。
そして、この一冊は必ずやその手助けをしてくれるだろう。