終わりあるもの
『天上の飲み物』 三浦しをん
どんな本?
主人公は約四百年、不老不死で生きるドラキュラ。人間と同じように生活するなかで、何度も恋に落ちるが、不老不死が故に愛する人とは連れ添えずいずれ、姿を消さなくてはならない。いっそ恋なんてしないと思っても30年もたつとまた恋に落ちる。
そんな彼が今恋しているのは25歳会社員。周りの結婚ラッシュで焦る彼女を見て、彼はあることが頭に浮かぶ。
「彼女をドラキュラの一族にしてしまおうか」
ドラキュラは自分の血を人間に与えると一族に招き入れ、永遠の命を与えることができるのだ。
愛する人に自分と同じ永遠の命の苦しみを味わわせるか、それとも人間として生き続ける道を残すのか、、、
彼の葛藤の中で人間として生きる人生でいかに限りある時間が大切なのか考えさせられる物語。
感じたこと
不老不死、一見うらやましくも感じるが、それは儚く、苦しいものであるということに納得した。愛する人と寄り添って生きていけないし、全て欲求を満たした後の死ねない先の未来を考えたら苦しみから逃れられない苦しみが待っている。
その中で感じることができるのが、終わりある事の大切さ。
終わりがあるから、大事にする。
終わりがあるから、今を生きられる。
終わりがあるからこそ、素晴らしい人生。
もし終わりがなかったら、命なんて大切にされない。
これは何事も同じだと思う。
家族だって、恋愛だって、人間関係だって、仕事だって、
いつか終わりが来る。
終わりが来ることを前提に考えるのは良いとは思えないけど、
たまにそのことを再確認することで、そのものの「かけがえのなさ」に気づき、
また大切にしていくことができると思う。
短編小説だから一瞬で読めるし、好きな作者だったから楽しく読めた。
kindleで初めて読んだ作品になったが思いのほか読みやすかったから、これからprime会員をちゃんと使い切っていくぞ!